要綱原案では,社外取締役の義務化の見送り,監査・監督委員会制度の導入,親会社の株主による子会社の監視強化,支配株主の異動を伴う第三者割当増資の規制等が示されています。
社外取締役の選任義務付けについては,「中間試案の補足説明」が,次のような機能が期待できるとしていました。
① 経営全般の監督機能
(a)取締役会における重要事項の決定に関して議決権を行使すること等を通じて
経営全般を監督する機能
(b)経営全般の評価に基づき,取締役会における経営者の選定・解職の決定に関
して議決権を行使すること等を通じて経営者を監督する機能(経営評価機能)
② 利益相反の監督機能
(a) 株式会社と経営者との間の利益相反を監督する機能
(b) 株式会社と経営者以外の利害関係者との間の利益相反を監督する機能
しかし,経済界の反対等により,義務化が見送られる方針です。
社外取締役を導入することにより,会社の業績が向上するのかという問題に関し,内田交謹「取締役会構成変化の決定要因と企業パフォーマンスへの影響」商事法務1874号は,社外取締役の増加によりトービンのQに統計学的に有意な改善があると指摘しています。トービンのQとは「(株式時価総額+総負債簿価)÷総資産簿価」として計算される値で,この値が高いほど,その企業の価値が株式市場で評価されているということになります。
社外取締役の導入後に業績が向上したとしても,「社外取締役の導入は,企業の業績を向上させる」ということを「証明」したことにはなりません(落合誠一編「会社法Visual Materials」有斐閣,77頁,149頁参照)。たとえば,社外取締役を導入するという経営改革の意欲のある企業は,他の改革も行う傾向があり,後者の改革が経営改善に結びついたともいえるからです。
実証研究の結果は,「社外取締役の導入は,企業の業績を向上させる」という仮説と整合的であり,仮説が正しいものである可能性が高いと言えても,仮説を「証明」したことにはならないのです。
弁護士 茨木