「労働契約法」という法律が,平成19年に制定され,平成20年3月1日から施行されています。この法律では,いくつかの判例法理が明文化されています(14条→出向法理,15条→懲戒権濫用法理,16条→解雇権濫用法理)。
現在の第180回国会には,労働契約法の一部を改正する法律案が提出されています。http://www.mhlw.go.jp/topics/bukyoku/soumu/houritu/180.html
26日午後の衆院本会議で賛成多数で可決され,参議院に送付されました。
改正案は,以下のとおり,いわゆる「雇止め法理」の明文化が意図されています。
(有期労働契約の更新等)
第十八条
有期労働契約であって次の各号のいずれかに該当するものの契約期間が満了する日までの間に労働者が当該有期労働契約の更新の申込みをした場合又は当該契約期間の満了後遅滞なく有期労働契約の締結の申込みをした場合であって,使用者が当該申込みを拒絶することが,客観的に合理的な理由を欠き,社会通念上相当であると認められないときは,使用者は,従前の有期労働契約の内容である労働条件と同一の労働条件で当該申込みを承諾したものとみなす。
一 当該有期労働契約が過去に反復して更新されたことがあるものであって,その契約期間の満了時に当該有期労働契約を更新しないことにより当該有期労働契約を終了させることが,期間の定めのない労働契約を締結している労働者に解雇の意思表示をすることにより当該期間の定めのない労働契約を終了させることと社会通念上同視できると認められること。
二 当該労働者において当該有期労働契約の契約期間の満了時に当該有期労働契約が更新されるものと期待することについて合理的な理由があるものであると認められること。
<雇止め法理とは?>
雇用契約には,「期間の定めのある雇用契約」と「期間の定めのない雇用契約」という2種類の契約類型があり,契約社員やアルバイトは,通常,前者の「期間の定めのある雇用契約」です。
期間の定めのある雇用契約は,期間満了により契約の効力がなくなるので,使用者が労働者に対して,契約を更新しないことを表明(雇止め)すれば,雇用契約は終了するのが民法上の原則です。
しかし,期間の定めのある雇用契約の場合にも,一定の場合,「解雇権濫用法理」が類推適用され,期間の定めのない雇用契約と同様に,契約の終了に制約がかけられています。これが,判例によって形成された「雇止め法理」です。
期間の定めのある雇用契約の場合にも,一定の場合,解雇権濫用の法理が類推適用されると判断したのが,東芝柳町工場事件(最判昭49.7.22民集28巻5号927頁)です。この判例は,期間の定めのある労働契約が反復継続されて,期間の定めのない労働契約と実質的に異ならなくなった場合には,労働契約の更新拒絶(雇止め)に,解雇権濫用法理が類推適用されるとしています。
さらに,日立メディコ事件(最判昭61.12.4)は,有期契約が期間の定めのない労働契約と実質的に同視できない場合でも,雇用継続に対する労働者の期待利益に合理性がある場合は,解雇権濫用法理の類推適用を認めています。
①東芝柳町工場事件のタイプを「実質無期契約タイプ」,②日立メディコ事件のタイプを「期待保護タイプ」と呼んだりしています。
改正法案の18条1号は,「実質無期契約タイプ」の雇止め法理を明文化したもので,同条2号は,「期待保護タイプ」の雇止め法理を明文化したものです。
弁護士 茨木