2012年度の最低賃金の目安について,全国平均で7円引き上げることが決まりました。全国平均では744円になります。
賃金の額は,「契約自由の原則」のもとでは,労働者と使用者間の自由な取引によって決定されるべきものです。しかし,労働者と使用者の非対等性から,賃金の額を両者の自由な交渉に委ねると,弊害が生じてきてしまいます。そこで,最低賃金法が制定され,最低賃金制度を定めています。
最低賃金制度は,憲法27条2項が国に対して要請する「勤務条件の基準の法定」の中核をなすものです。
最低賃金法第1条は,以下のとおり,最低賃金制度の目的を規定しています。
この法律は,賃金の低廉な労働者について,賃金の最低額を保障することにより,労働条件の改善を図り,もつて,労働者の生活の安定,労働力の質的向上及び事業の公正な競争の確保に資するとともに,国民経済の健全な発展に寄与することを目的とする。
仮に最低賃金額より低い賃金で合意しても,その合意は無効とされ,最低賃金未満の賃金しか支払わなかった場合には,最低賃金額との差額を支払わなくてはなりません。また,地域別最低賃金額以上の賃金額を支払わない場合には,最低賃金法に罰則(50万円以下の罰金)が定められ,特定(産業別)最低賃金額以上の賃金額を支払わない場合には、労働基準法に罰則(30万円以下の罰金)が定められています。
最低賃金が生活保護の給付水準を下回る「逆転現象」は現在,11都道府県で起きています。逆転現象の解消について,労使間で調整が難航しているのです。
生活保護法は,自助の原則及び親族扶養優先の原則を定めています。
(保護の補足性)
第四条 保護は,生活に困窮する者が,その利用し得る資産,能力その他あらゆるものを,その最低限度の生活の維持のために活用することを要件として行われる。
2 民法(明治二十九年法律第八十九号)に定める扶養義務者の扶養及び他の法律に定める扶助は,すべてこの法律による保護に優先して行われるものとする。
この原則を,「補足性の原則」といい,生活保護法における大原則であり,続く第5条でそのことが確認されています。
(この法律の解釈及び運用)
第五条 前四条に規定するところは,この法律の基本原理であって,この法律の解釈及び運用は,すべてこの原理に基いてされなければならない。
少し前に問題になった次長課長の河本準一さんの不正受給問題は,この「補足性の原則」に関する問題です。
弁護士 茨木