2012年7月31日火曜日

棚瀬孝雄教授

30年以上前,棚瀬弁護士は,伊藤眞教授と『企業倒産の法理と運用』という本を出版しています。http://law-t.jp/publications.html













伊藤教授は,民事訴訟法学や倒産法学の誰もが認める泰斗ですが,判例タイムズの座談会(「伊藤民事手続法学と判例・実務,判例タイムズ1253号9頁)で,棚瀬弁護士との思い出が語られています。

 松下淳一教授「棚瀬先生との学問的な交流が先生ご自身のお考えに遠近様々に影響しているのではないか,あるいはお互いの考え方が触媒になっているような部分があるのではないかと推測しています。ご自身で何かもしお感じになるところがあれば,ぜひうかがってみたいなと思います。」
 伊藤教授「棚瀬君とは大学が同期なんですね,ですから,古くからのつきあいで,また,名古屋大学でもしばらくの間,同僚であったわけです。棚瀬君は,ご承知の通り,理論面で傑出しているだけではなく,実定法分野についても幅広い問題関心を持った法社会学者で,たまたまその時期に倒産に関して関心を持たれたのだと思いますけれども,一緒に調査研究をしてみないかというお話しがありました。私自身は,法社会学的な意味での調査などにはまったく無縁でしたので,棚瀬君の足手まといになりながら,一緒に仕事をしたことについて,今でもやや恥ずかしく,他方でなつかしく思っています。・・・」
松下教授「垣内さんの先ほどのまとめでいえば機能論的な問題設定・・・というのは,あるいはこのころの棚瀬先生との交流も一つのきっかけなのかなとも推察するのですけれども。」
 伊藤教授「ええ,それは間違いありません。また,・・・これをきっかにして,・・・アメリカでの勉強などとも相まって,自分の研究領域を拡大することができたという意味で,私にとっては,非常に大きな意義がありました。」

 伊藤教授と同列に論じるのはおこがましいですが,私も,棚瀬弁護士と一緒にインドに調査に行ったり,日々の仕事を通じて,とても刺激を受けています。

弁護士 茨木

2012年7月30日月曜日

最低賃金と生活保護

 
 2012年度の最低賃金の目安について,全国平均で7円引き上げることが決まりました。全国平均では744円になります。

 賃金の額は,「契約自由の原則」のもとでは,労働者と使用者間の自由な取引によって決定されるべきものです。しかし,労働者と使用者の非対等性から,賃金の額を両者の自由な交渉に委ねると,弊害が生じてきてしまいます。そこで,最低賃金法が制定され,最低賃金制度を定めています。
 最低賃金制度は,憲法27条2項が国に対して要請する「勤務条件の基準の法定」の中核をなすものです。


 最低賃金法第1条は,以下のとおり,最低賃金制度の目的を規定しています。

 この法律は,賃金の低廉な労働者について,賃金の最低額を保障することにより,労働条件の改善を図り,もつて,労働者の生活の安定,労働力の質的向上及び事業の公正な競争の確保に資するとともに,国民経済の健全な発展に寄与することを目的とする。

 仮に最低賃金額より低い賃金で合意しても,その合意は無効とされ,最低賃金未満の賃金しか支払わなかった場合には,最低賃金額との差額を支払わなくてはなりません。また,地域別最低賃金額以上の賃金額を支払わない場合には,最低賃金法に罰則(50万円以下の罰金)が定められ,特定(産業別)最低賃金額以上の賃金額を支払わない場合には、労働基準法に罰則(30万円以下の罰金)が定められています。

 最低賃金が生活保護の給付水準を下回る「逆転現象」は現在,11都道府県で起きています。逆転現象の解消について,労使間で調整が難航しているのです。


 生活保護法は,自助の原則及び親族扶養優先の原則を定めています。

(保護の補足性)
第四条 保護は,生活に困窮する者が,その利用し得る資産,能力その他あらゆるものを,その最低限度の生活の維持のために活用することを要件として行われる。
2 民法(明治二十九年法律第八十九号)に定める扶養義務者の扶養及び他の法律に定める扶助は,すべてこの法律による保護に優先して行われるものとする。

 この原則を,「補足性の原則」といい,生活保護法における大原則であり,続く第5条でそのことが確認されています。

(この法律の解釈及び運用)
第五条 前四条に規定するところは,この法律の基本原理であって,この法律の解釈及び運用は,すべてこの原理に基いてされなければならない。

少し前に問題になった次長課長の河本準一さんの不正受給問題は,この「補足性の原則」に関する問題です。

弁護士 茨木

2012年7月27日金曜日

犯罪の件数

 現在の刑法犯の認知件数は227万件,検挙件数が118万件で,検挙率は52.1%です(平成22年)。
(平成23年版犯罪白書より転載)


 ただ,法社会学的には,暗数の存在,認知件数の変動の理由,犯罪の種類・手口等を分析する必要があり,統計の推移だけで,治安が悪化したかどうかは判断できません。


捜査は,犯罪があると思料するときに,開始されますが(刑訴189条2項),捜査が開始される手がかりのことを「捜査の端緒」といいます。捜査の端緒の約9割が,被害者等による届出です。残りの1割が,職務質問,告訴,自首などで,そのうち職務質問が圧倒的に多いです。

 現行犯逮捕も捜査の端緒のひとつで,刑事訴訟法上,警察官でなくとも,誰でも現行犯逮捕をすることができます。
【刑事訴訟法 213条】
現行犯人は,何人でも,逮捕状なくしてこれを逮捕することができる。

 私も,数年前に,駅のエスカレーターで女子高生のスカートの中を盗撮していた男を,現行犯逮捕したことがあります。

私人が現行犯人を逮捕したときは,直ちに警察官等に,犯人を引き渡さなければなりません。
【刑事訴訟法 214条】
検察官,検察事務官及び司法警察職員以外の者は,現行犯人を逮捕したときは,直ちにこれを地方検察庁若しくは区検察庁の検察官又は司法警察職員に引き渡さなければならない。

 ただ,テレビで,万引きGメンが逮捕した後,店長が説教だけをして帰してしまうシーンを見ることがあります。「警察には言わないで下さい」と泣いて懇願するのが,よくあるパターンです。
私人による現行犯逮捕後の釈放の可否という問題です。刑訴214条が禁止しているのは留置の継続であって釈放を禁止しているとまでは解されないこと,逮捕の理由や必要性がないことが発覚した場合にまで引渡しを義務付ける必要はないことなどを理由に肯定する説もありますが,人身の拘束について私人に処分権を認めるのは相当でないこと,引渡しを義務的なものとし,私人による現行犯逮捕について捜査機関による審査を受けさせるようにしないと逮捕権の濫用をまねくおそれがあることなどを理由に,否定する説が多数説とされています。

 私が現行犯逮捕をしたときも,警察に引き渡しました。

弁護士 茨木

2012年7月26日木曜日

労働契約法の改正

 「労働契約法」という法律が,平成19年に制定され,平成20年3月1日から施行されています。この法律では,いくつかの判例法理が明文化されています(14条→出向法理,15条→懲戒権濫用法理,16条→解雇権濫用法理)。

 現在の第180回国会には,労働契約法の一部を改正する法律案が提出されています。http://www.mhlw.go.jp/topics/bukyoku/soumu/houritu/180.html
26日午後の衆院本会議で賛成多数で可決され,参議院に送付されました。
 改正案は,以下のとおり,いわゆる「雇止め法理」の明文化が意図されています。

(有期労働契約の更新等)
第十八条
有期労働契約であって次の各号のいずれかに該当するものの契約期間が満了する日までの間に労働者が当該有期労働契約の更新の申込みをした場合又は当該契約期間の満了後遅滞なく有期労働契約の締結の申込みをした場合であって,使用者が当該申込みを拒絶することが,客観的に合理的な理由を欠き,社会通念上相当であると認められないときは,使用者は,従前の有期労働契約の内容である労働条件と同一の労働条件で当該申込みを承諾したものとみなす。
一 当該有期労働契約が過去に反復して更新されたことがあるものであって,その契約期間の満了時に当該有期労働契約を更新しないことにより当該有期労働契約を終了させることが,期間の定めのない労働契約を締結している労働者に解雇の意思表示をすることにより当該期間の定めのない労働契約を終了させることと社会通念上同視できると認められること。
二 当該労働者において当該有期労働契約の契約期間の満了時に当該有期労働契約が更新されるものと期待することについて合理的な理由があるものであると認められること。

<雇止め法理とは?>
 雇用契約には,「期間の定めのある雇用契約」と「期間の定めのない雇用契約」という2種類の契約類型があり,契約社員やアルバイトは,通常,前者の「期間の定めのある雇用契約」です。
 
期間の定めのある雇用契約は,期間満了により契約の効力がなくなるので,使用者が労働者に対して,契約を更新しないことを表明(雇止め)すれば,雇用契約は終了するのが民法上の原則です。
 しかし,期間の定めのある雇用契約の場合にも,一定の場合,「解雇権濫用法理」が類推適用され,期間の定めのない雇用契約と同様に,契約の終了に制約がかけられています。これが,判例によって形成された「雇止め法理」です。

 期間の定めのある雇用契約の場合にも,一定の場合,解雇権濫用の法理が類推適用されると判断したのが,東芝柳町工場事件(最判昭49.7.22民集28巻5号927頁)です。この判例は,期間の定めのある労働契約が反復継続されて,期間の定めのない労働契約と実質的に異ならなくなった場合には,労働契約の更新拒絶(雇止め)に,解雇権濫用法理が類推適用されるとしています。
 さらに,日立メディコ事件(最判昭61.12.4)は,有期契約が期間の定めのない労働契約と実質的に同視できない場合でも,雇用継続に対する労働者の期待利益に合理性がある場合は,解雇権濫用法理の類推適用を認めています。

 ①東芝柳町工場事件のタイプを「実質無期契約タイプ」,②日立メディコ事件のタイプを「期待保護タイプ」と呼んだりしています。

 改正法案の18条1号は,「実質無期契約タイプ」の雇止め法理を明文化したもので,同条2号は,「期待保護タイプ」の雇止め法理を明文化したものです。

 改正案に対して,判例法理を明文化するものにすぎず不十分である,という批判が労働者側からある一方で,明文化することによるインパクトは大きく,雇い止めによる労務問題がさらに発生するのではないかと,企業側は危惧しています。

弁護士 茨木

2012年7月25日水曜日

家事調停

「ケース研究311号」には,「座談会 家事事件手続法施行に向けて検討すべき課題」という特集が載っています。参加者は,裁判官・書記官・家裁調査官・調停委員で,合計14名です。新法の説明,制度趣旨,運用の留意点などが話されています。

この記事に,東京家裁の調停事件件数のデータが載っているので,紹介します。

調停事件新受事件は,平成13年が8733件で,平成21年に1万件を超え,平成22年は1万916件となっています。

事件の類型別でみると,夫婦関係調整が4264件(39.06%),子の監護が1698件(15.56%),婚姻費用分担が1333件(12.21%),遺産分割が1274件(11.67%)となっています(平成22年)。
婚姻費用分担は,平成18年に比べると約1.6倍(835件→1333件)になっています。また,子の監護に関する処分は,全体として約1.5倍(1168件→1698件)になっており,そのうちの面会交流は,約1.6倍(372件→578件)になっています。

 渉外家事調停事件も増加しており,平成18年から平成22年の間に,約2倍(354件→715件)になっています。その内訳は,中国173件,フィリピン168件,韓国125件とアジア諸国が多く,アメリカは49件です。

弁護士 茨木

2012年7月24日火曜日

親権停止制度

親権停止制度を創設した改正民法が,4月から施行されています。改正法の運用についての記事があり,未成年者自らの申立てが認められたと報告されています。

 旧民法等においては,親権喪失の審判の申立人は,子の親族及び検察官(旧民法834条)並びに児童相談所長(旧児童福祉法33条の7)とされており,子については,請求権が認められていませんでした。
 それに対し,新法では,子自身を申立人に加えました(民法834条)。創設された親権停止の審判も同様です(民法834条の2)。

 家事事件の手続における手続上の行為を「手続行為」といい,この手続行為を自ら有効にすることができる能力を「手続行為能力」といいます(家事事件手続法17条1項)。前に,非訟事件手続法の話しをしましたが,家事事件の手続も非訟ですので,「訴訟○○」とは呼ばず,「手続○○」と名付けています。
手続行為能力は,民事訴訟法における訴訟能力に対応し,訴訟能力を有しない未成年者及び成年被後見人は,原則として,家事事件においても手続行為能力を有しません(家事事件手続法17条1項,民事訴訟法28条,31条)。
 もっとも,できるだけ本人の意思を尊重すべき類型の事件があり,そのような事件では,本人に意思能力があれば,手続行為能力を認めています。親権停止の審判事件もその一つです(家事事件手続法168条3号,118条)。


弁護士 茨木

2012年7月23日月曜日

訴訟の数

 日本は,外国と比較して,訴訟件数が少ないと言われています。村山眞維・濱野亮『法社会学(第2版)』(有斐閣,106頁)には,実際のデータが載っており,紹介します。

 地方裁判所の第一審通常訴訟新受件数は,22万2594件(2010年)です。1970年が8万6353件だったので2倍以上になっています。また,簡易裁判所は,58万5594件(2010年)で,40年間で9倍以上増加しています。
 
40年前に比べて訴訟件数はかなり増えていますが,訴訟件数を人口10万人当たりでみると,日本は651件であるのに対し,アメリカのカリフォルニア州は3095件,フランスは2404件(1999年当時),ドイツは日本の約7倍(1980年代半ば)とされており,訴訟大国と言われるアメリカはもちろん,フランス,ドイツと比較しても,訴訟件数は少ないといえます。

 なぜ,日本は訴訟件数が少ないのかという問題は,法社会学の重要な研究対象のひとつです。有名なものとして,棚瀬弁護士の師匠でもある川島武宜が,『日本人の法意識』という本を書いています。

弁護士 茨木

2012年7月20日金曜日

会社法改正

 法制審議会会社法制部会は,7月18日の会合で,会社法改正の要綱原案を示しました。
 要綱原案では,社外取締役の義務化の見送り,監査・監督委員会制度の導入,親会社の株主による子会社の監視強化,支配株主の異動を伴う第三者割当増資の規制等が示されています。

 社外取締役の選任義務付けについては,「中間試案の補足説明」が,次のような機能が期待できるとしていました。

経営全般の監督機能
a)取締役会における重要事項の決定に関して議決権を行使すること等を通じて
経営全般を監督する機能
b)経営全般の評価に基づき,取締役会における経営者の選定・解職の決定に関
して議決権を行使すること等を通じて経営者を監督する機能(経営評価機能)
利益相反の監督機能
a 株式会社と経営者との間の利益相反を監督する機能
b 株式会社と経営者以外の利害関係者との間の利益相反を監督する機能

 しかし,経済界の反対等により,義務化が見送られる方針です。

 社外取締役を導入することにより,会社の業績が向上するのかという問題に関し,内田交謹「取締役会構成変化の決定要因と企業パフォーマンスへの影響」商事法務1874号は,社外取締役の増加によりトービンのQに統計学的に有意な改善があると指摘しています。トービンのQとは「(株式時価総額+総負債簿価)÷総資産簿価」として計算される値で,この値が高いほど,その企業の価値が株式市場で評価されているということになります。

 社外取締役の導入後に業績が向上したとしても,「社外取締役の導入は,企業の業績を向上させる」ということを「証明」したことにはなりません(落合誠一編「会社法Visual Materials」有斐閣,77頁,149頁参照)。たとえば,社外取締役を導入するという経営改革の意欲のある企業は,他の改革も行う傾向があり,後者の改革が経営改善に結びついたともいえるからです。
実証研究の結果は,「社外取締役の導入は,企業の業績を向上させる」という仮説と整合的であり,仮説が正しいものである可能性が高いと言えても,仮説を「証明」したことにはならないのです。

弁護士 茨木

2012年7月19日木曜日

非訟事件手続規則と家事事件手続規則

非訟事件手続規則と家事事件手続規則が公布されました。  http://kanpou.npb.go.jp/20120717/20120717g00154/20120717g001540000f.html

非訟事件手続法は,第177回国会において,平成23年5月19日に成立し,同月25日に公布されました。平成25年1月1日から施行される予定です。
「非訟事件手続法」という法律は,明治31年に制定されていますが,今回制定された非訟事件手続法は,旧法の根幹部分を全面的に変えるため,改正という方式ではなく,新法の制定という方式をとっています。そして,旧非訟事件手続法は,「外国法人の登記及び夫婦財産契約の登記に関する法律」と名称を変えて存続しています。

 「非訟事件」とは何を意味するのか,ピンと来ないかもしれませんが,「非訟」を定義することが困難なため,非訟事件手続法では定義規定を置いていません。具体例としては,裁判例が最近たくさん出ている会社法所定の株式等の価格の決定に係る事件や,遺産分割,養育費の支払い等の家事事件などが挙げられます。

 ただ,家事事件については,非訟事件手続法とは別に,家事事件手続法が制定されています。家事事件手続法は,一般国民が読んでも分かりやすい法律にするため,非訟事件手続法の規定を準用するという複雑な方式をとらず,家事事件手続法だけを読んでも内容を把握することができる,自己完結的な法律になっています。


弁護士 茨木

2012年7月18日水曜日

「法社会学」とは

棚瀬弁護士は「法社会学」の専門家ですが,法社会学とはどのような学問なのですか,という質問を受けることがあります。
 第2版が最近出版された村山眞維・濱野亮『法社会学』(有斐閣,2012年)では,次のように定義されています。

 法社会学は,社会現象としての法の存在形態や作用,および法と他の社会現象との因果関係を経験科学の方法を用いて解明しようとする社会科学の一分野である。
 
別の箇所では,次のようにも言い換えられています。

 ルールを用いた社会統治の仕組みとしての法が,実際にどのように社会のなかで作動しているのかを,経験的社会科学の方法を用いて明らかにしてくのが法社会学である。法社会学は,法とその他の社会現象との因果的関係についての理論構築をめざすとともに,政策科学の発展にも貢献する。

 棚瀬弁護士の著作・論文リストを見てもらえれば,多様な社会現象を扱っているのがお分かりになると思います。http://www.law-t.jp/publications.html
前記の『法社会学』では,巻末に参考文献の解説が載っており,棚瀬弁護士が執筆・編集した本も紹介されているので,以下に引用します。

「棚瀬孝雄『現代社会と弁護士』(日本評論社,1987年)は,1980年代の日本の弁護士の状況を分析するとともに,そのあり方に批判的な立場から,新しい弁護士モデルを理論的に提示している。」
 「裁判に関連する主な研究書としては,棚瀬孝雄『紛争と裁判の法社会学』(法律文化社,1992年)と棚瀬孝雄(編)『たばこ訴訟の法社会学-現代の法と裁判の解読に向けて』(世界思想社,2000年)がある。前者は裁判所内外における紛争処理過程の理論的分析を行うほか,裁判の政治化現象についても分析を行っている。後者は,現代型訴訟のひとつの典型例である「嫌煙権訴訟」と「たばこ訴訟」を多様な観点から論じたものである。」

弁護士 茨木

2012年7月17日火曜日

違法ダウンロードの刑事罰化

「違法ダウンロードの刑事罰化」等を内容とする改正著作権法が成立し,平成24年10月1日より施行されます。この法改正に関して,文化庁がQ&Aを公表しています。


たとえば,「『You Tube』などの動画投稿サイトの閲覧についても,その際にキャッシュが作成されるため,違法になるのですか。」という質問に対して,以下のように答えています。
「違法ではなく,刑罰の対象とはなりません。
動画投稿サイトにおいては,データをダウンロードしながら再生するという仕組みのものがあり,この場合,動画の閲覧に際して,複製(録音又は録画)が伴うことになります。しかしながら,このような複製(キャッシュ)に関しては,第47条の8(電子計算機における著作物利用に伴う複製)の規定が適用されることにより著作権侵害には該当せず,「著作権又は著作隣接権を侵害した」という要件を満たしません。」

また,「違法ダウンロードを刑事罰化することにより,インターネットを利用する行為が不当に制限されてしまうのではないでしょうか。」という質問に対しては,以下のように回答しています。
「違法ダウンロードに係る刑事罰については,故意犯のみを処罰の対象としており,『有償著作物等』であること及び『著作権又は著作隣接権を侵害する自動公衆送信』であることを知っていない場合には,刑罰の対象とはなりません。
また,この刑事罰は親告罪(第123条)とされており,権利者からの告訴がなければ公訴を提起できないこととされています。
さらに,違法ダウンロードの刑事罰化に係る規定の運用に当たっては,政府及び関係者は,インターネットの利用行為が不当に制限されることのないよう配慮しなければならないこととされています。(改正法の附則第9条や参議院の附帯決議)
これを受け,警察は捜査権の濫用につながらないよう配慮するとともに,関係者である権利者団体は,仮に告訴を行うのであれば,事前に然るべき警告を行うなどの配慮が求められると考えられます。」

 文化庁はこのように回答していますが,回答どおりに法が運用されるかについては,多くの専門家から懸念が表明されています。

弁護士 茨木

2012年7月13日金曜日

日本の改正民法と韓国の改正民法

「<改正民法>離婚後の養育費、親子面会 取り決めなくても届け受理」という記事がありました。
この問題については,棚瀬弁護士が「取り決めの有無が記入されていなかった場合,自治体の担当者が一言確認するだけでも,だいぶ違ってくるだろう」とコメントしていました。
しかし,記事では,「大阪府内のある市の市民課職員は、離婚届の新しいチェック欄について、記入を促すよう声をかけるなどの対応は、特にしていないことを明らかにした。「戸籍の登録に必要な記入漏れがないかを確認することが重要な業務。新設された欄(の確認)は、そこまで注意を払うべきものとは思っていない」と職員は話す。」とあります。さらには,「今回の法改正を知らない職員さえいる」とあります。

 「ケース研究310号」には,最高裁判所事務総局家庭局が翻訳した,大韓民国におけるパンフレット「両親」が掲載されています。韓国では,平成20年に法改正があり,子どものいる夫婦が離婚するときには,3ヶ月の熟慮期間を設け,その後,親権者及び養育事項に関する協議書又は家庭法院の審判正本の提出が必要となりました。このパンフレットは,法改正に合わせて作成されたものです。日本が作成したパンフレットよりも,はるかに充実しています。
 韓国でも義務化された親教育プログラムの話しは,棚瀬一代教授の『離婚で壊れる子どもたち』(265頁)でも取り上げられています。

弁護士 茨木

いじめとヒッグス粒子

大津市のいじめ問題で,いじめと自殺との因果関係が問題となっています。
 民事事件における因果関係の証明度に関しては,ルンバール事件判決(最判昭和50.10.24)が先例とされており,以下のように判示されています。
「訴訟上の因果関係の立証は,一点の疑義も許されない自然科学的証明ではなく,経験則に照らして全証拠を総合検討し,特定の事実が特定の結果発生を招来した関係を是認しうる高度の蓋然性を証明することであり,その判定は,通常人が疑を差し挾まない程度に真実性の確信を持ちうるものであることを必要とし,かつ,それで足りるものである。」
 「一点の疑義も許されない自然科学的証明」という判示部分について,自然科学的証明が「一点の疑義も許されないもの」であるといってよいかどうかには,疑問があり得るというコメントが,司法研修所が編集した『民事訴訟における事実認定』(4頁)に書いてあります。
 物理学の世界で統計的に存在すると認められる確率は,「99.9999%」だそうで,一点の疑義も許されないとはいえなそうです。欧州原子核研究機構(CERN)の衝突実験で発見されたと言われているヒッグス粒子が存在する確率は,99.9999%を越えているようです。

弁護士 茨木

2012年7月12日木曜日

事務所の場所

 2丁目に事務所があるので,そういう事件が多いのですか(どういう事件を想定しているのかよく分かりませんが。),とよく聞かれますが,残念なことにそういう事件はまったくありません。
 今週の『週刊東洋経済』(7月14日号)では,日本の知られざる巨大市場LGBTという特集が組まれています。6兆6000億円の市場規模だそうです。
 事務所の近くにあって私もよく行く伊勢丹メンズ館は,品ぞろえもゲイが好むものが豊富で,「私たち向けだよね」とゲイの間では常識となっているようです。ただ,伊勢丹側は,「特定の層をターゲットにはしておらず,広く顧客に訴求する店舗展開,品ぞろえをしている」だけだと話しています。
 当事務所も,広く顧客に訴求して,様々な事件を扱っていきたいと思っています。

弁護士 茨木